森本めぐみ個展「アイアム、ノット、ア・ガール」
2009年 02月 05日
学校帰りに、森本めぐみさんの個展を見に、
中島公園駅近くのTO OV cafe ト・オン・カフェへお邪魔した。
森本さんの作品は、四丁目プラザのアートショップ、華アグラで度々目にしていた。
彼女の絵が持つまなざしの強さは、それをこちらから観察するだけではよくわからない。
「可愛い絵だね」、一目見たらみんなが口を揃えてそういうのだろうけれど、
これがなぜか可愛いだけで終わらないことが恐ろしい。
驚異的、一種の脅威的にも感じられるのだが、
森本さんの絵を思い起こそうとする度、そのまなざしの強さが増していくように思うのだった。
あるいは、背中から、
そっと、
静かに、
狙われているような。
森本さんは21歳の女の方。華アグラで経歴を拝見して、驚いた記憶がある。
歳は近いのだろうけれど、近いというのは遠いことにもなるような気もする。
だが、たとえ遠かったとしても、繋げられる道はいくらでも探せそうだ。
ここには書けないけれども、いろいろと思うところもあり、
彼女の世界をもっと知りたいと感じた。
そんな矢先に、彼女の個展が開かれると知り、会期の開始を楽しみにしていた。
ギャラリーを併設するカフェ、
ト・オン・カフェには初めて足を運んだけれども、よい空間だと思った。
ギャラリーの入り口には、石畳が3つほど並べられていて、その先端に立つと、
床から水が零れ、満たされ、ひたひたと私の足に触れてくるような。
そこから一歩を踏み出すのには、非常に勇気の居ることだったけれども、
水音を立てながら歩きまわっていると、
森本さんの世界に少し近づけたように思えるのだった。
床から数センチ上に足があるだけなのに水を感じさせることができるんだな、と感動した。
(けれども、存在しない水について、語り合える人は私の周りに存在するのかな、果たして)
森本さんの作品について、言いたい、語りたい、という気持ちも強いが、
自分の感覚が狂喜して勝手に走り出すのを追いかけるだけで精一杯である。
カフェに入ってきて、一番最初に飛び込んできたのは、
お店のあちこちにぶら下がったモビール。
ダンボールを人型に切り抜き(からだの歪みが、怖いほど可愛い)、
肌、表情などを吹き込んで
子どもの肌着で作ったという、下着を穿かせている。
これは、保育園のころの記憶からきているものらしい。
私も保育園時代の記憶(3、4歳)を持っている。確かにパンツ一丁だった。
保母さんの観点はどこかずれていた。
お箸の持ち方なんかは言いたいことを言い、終いには放っておくくせに、
すぐ子どもの世界に介入してきた。
保育園にあずけられる=無理やり、暗くて広い気持ち悪い部屋に連れて行かれる、
だと思っていた。
あの異様なお昼寝タイムはなんだったのか。
あんな風に、いろんなものを素直に嫌悪したり愛していた感性を一度は失い、
そしてまた取り戻しつつあるようだ。
なぜだろう。なぜ感覚は尖ったり、丸くなったりするのだろう。
「山の星々」という絵には他の作品と同じ強い赤とともに、
薄い空色の青がうっすらとたなびいていて、うつくしい。
その方向へ流れていきたくなる。
山の風景ってそんなところがある。
手作り本も展示されていて(とにかくいろいろと面白い表現をされている方のようだ)、
中でも、食べているそばから、食べたものを記録する、という試みの一冊に驚かされた。
食べ物への姿勢
(たとえば、「食べ物は裸なのに、自分は服を着てそれを食べるなんて、
食べ物に失礼だ」という思いから、裸でおにぎりを食べた記録など)
が「共感」ではないのだけれど、こういう感覚をどこで拾ってきたのか。
似ている、といっても失礼だし、なんと言ってよいのかわからない。
ただ、「お酢ときゅうり」(河童巻き)や「黄色い目」(ゆで卵)、「果実」(りんご)など、
食べ物を描いた自作詩は結構あって
(河童巻き――失恋、ゆで卵――内在する女性、りんご――母と子
のように、食べ物にテーマを重ねると、詩になってしまうのはなぜだろう)
そこに共通した流れを、
森本さんの作品の中にも感じたのだった。
いま思い出したのだが、
「ペットのお墓の墓標として使用する箸で、
ものを食べるなんて、食べ物に失礼ではないのか」という私自身の考えから、
「箸禁止令」なんていう小説を書いたことがある。
実際にやったことはまだ無い。
お弁当に、よく間違えてフォークを持ってきてしまい、
フォークでご飯を食べる友達がいるが(その姿がとても可愛くてよく似合っている)、
あれで、食べ物自体も、その味わいも変化するに違いない。
この展示に関して興味をもたれた方は、
(9月にあった森本さんの別の個展だが、一部の展示作品が被っており、
ACRYL AWARD2008の大賞受賞作品の写真も見れるので)
栄通さんが書かれた記事をこちらからご覧ください。
もちろん空間が違えば、作品もまったく別ものになるのだから、
実際に見ていただくことをお勧めする。
当初、8日までの会期で、「今日しか行けない!」と思い、見に行ったのだが、
15日までに延長されたようだ。でも、今日行ってよかった。できれば2度目も行きたい。
「現代詩手帖」のバックナンバーの数!「ユリイカ」は珍しくないけれど、詩手帖は珍しい。
通ってぜひ読み込んでみたい。
さてはて、奥井ギャラリーに忘れてきたビニ傘をやっと取り戻した途端、
今度はト・オン・カフェに忘れてきてしまった。
もはや、あのビニ傘はただの安いボロ傘などではない。
空間から抜け出るとき、透明で骨みたいなあの存在は、
興奮している目にどうしても飛び込んでこないみたいだ。
★☆★
MegumiMorimotoExhibition「I am not a girl.」
森本めぐみ個展「アイアム、ノット、ア・ガール」
会期
2009.1.24(土)~2.15(日)
場所
TO OV cafe ト・オン・カフェ
札幌市中央区南九条西三丁目二の一マジソンハイツ1階
(地下鉄中島公園駅から徒歩1.5分)
時間
月~土 10:30~22:00
日 10:30~20:00
お問い合わせ先、カフェURL
toovcafe@nifty.com
http://toov.cafe.coocan.jp/
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by moonpower0723
| 2009-02-05 22:44
| 美術部の人々、札幌アート