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森本めぐみさんの個展 くものお/油揚げ/祈願

森本めぐみさんの個展 くものお/油揚げ/祈願_d0101676_09633.jpg


画家の森本めぐみさんの個展「くものお」がテンポラリースペースで開かれていて、年を跨ぎ越し、今月17日迄だった。最終日に4回目の訪問。会期中に制作していた絵が完成していた。しかも素敵な買い手つき。
その絵――真っ赤なおかっぱ頭の少女が両手に器を持ち、立っている。雨粒に抗うように、ヒコーキが地面に直角に飛び去っていく。ヒコーキには尾ひれがついているものと、ついていないものがある。雄と雌かもしれない、などと勝手に見比べる。尾ひれは卵をひきずっているのだと思ったけれど、オーナーのNさんは尾ひれは精子だと言うから、そうかもしれないしどちらでもいいと思った。1月7日に訪ねたときは、まだその絵は床に身を横たえていて、絵の具のチューブに取り囲まれていた。2階から見下ろすと、複眼を思わせる眼差しで彼女は私を射た。赤だ。
ギャラリーの入り口脇に、私の詩集が積まれており、森本さんの装画の原画が掛けられていた。拾ってきたという平石が詩集と戯れると、何だか祭壇のようで面白い。森本さんは原画を私にくださると言う。驚いてしまって、打たれるように嬉しかったのに、なんだか悪いと思って「はい」とすぐに言えなかった。東京に一緒に連れて行こう。
森本さん、たくさんの「恵み」をありがとうございました。
作品がかたちになって、立ち上がっていくさまは見事でした。

会場で詩集を買ってくださった皆さまにも感謝です。
油揚げを売り歩くような快さでした。

Nさんが、佐佐木方斎さん編の『櫻庭洋一歌集』をくださった。
昨年春の佐佐木さんの展示で読んで以来、忘れ難い一冊だったので
「あげるよ」と聞いてとびきり興奮した。

皮膚の下極彩色の地獄あり 五臓六腑の密林の花

櫻庭洋一さんは病床で歌を詠み続けたひとだ。
歌集に小さな名刺カードが挟まれている。女の子の名前とお店の電話番号がハンコで押されている。挟めたまま大事にしておく。

森本さんの個展は、以下のページに作品の写真つきで紹介されています。
写真家、竹本英樹さんのブログ
石塚耕一さんのブログ「学びの森」 
制作の様子がわかりますね。

追記
丸島均さんのブログ「栄通記」
こちらでは、②で公開制作、③で完成作品の画像を見ることができます。

***

油揚げならば、だし汁が染みていて欲しいものだけれど、読み手の舌はいろいろらしく。「おそろしい」と年賀状に万年筆、「中身がない」とルーズリーフにボールペン、「天才肌ではないよね」と受話器越しのくぐもった声。油揚げを煮込むと、油膜がふわりと浮いてきて、揚げはふくふく肥えていく。私が享受しているものは何だろう。まだ姿が見えないのです。鼻をヒクつかせて忍び寄りたい。

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16日はセンター試験を受けてきた。化粧室で友達に「一瞬亡霊を見たかと思った」と言われる。いるはずのない人がいるのだから、当たり前である。振り込んだ受験料をみすみす捨てられるほど、私自身も親もぬるくはない。
試験会場の某大学校門で、レオパレス××の人がカイロやらチョコレートやらを配っていた。「お疲れ様です。明日もがんばってください」「はあい」と(理系教科のみの“明日”は受けないのに)ありがたく頂戴したが、「合格祈願」と銘打たれ御守りを模したそれらの袋を開封するにあたり、いたたまれない気持ちになった。このひと月半、何回不必要な(と言うのは非常に申し訳ないけれど)「祈願」を注がれたか不明だが、その蓄積が何らかの別の祈り(またはとても悪いこと、呪い?)を誘発するのではないか、と不安にかられる。帰りのバスに揺られながら、左手にカイロを握り、右の奥歯で水色のマーブルチョコを砕く。

私の分の祈願はそうだ、他の受験生に送ればいいのだ。
これからが勝負なんだ、と念じている、自分にも。
by moonpower0723 | 2010-01-22 00:28 | 美術部の人々、札幌アート

文学少女は詩人をめざす


by moonpower0723