人気ブログランキング | 話題のタグを見る
成井 豊 「ナツヤスミ語辞典 21世紀版」_d0101676_22162788.jpg


ナツヤスミ語辞典 21世紀版
成井 豊 / / 白水社
ISBN : 4560035490




■演劇部での日々 ~キャラメルボックス~

中学時代、私は演劇部に所属していた。
顧問の先生の好きな劇団が、キャラメルボックスだった。
独特の長台詞をオーバーアクションを用いて一気に読むキャラメルボックスの舞台は、
当時、部員たちが必死になって入賞を目指していたコンクールでの模範的優秀作品(なるべくリアルに。アクションは、必要なものだけ。やりすぎたコメディはよろしくない)とは、はっきりいって正反対だった。
しかし、あくまで、先生が演劇のお手本として選んでいるのは、キャラメルボックスだった。
部員たちは、その手本を信じて、コンクールの入賞を真剣に目指していたが、少々不毛だったかもしれない。
まぁ、とにかく
元気のいい中学生が演じるキャラメルボックスもどきはすこぶる評判が悪かった。
というのも、キャラメルボックスというプロの集団だからこそ、あの長台詞と不自然なオーバーアクションで観客を魅せることができたのだ。滑舌の悪い素人中学生が、長台詞をわめいたところで、何を言っているかさえもわからなかっただろう。
そんなわけで、私の中学3年間はキャラメルボックスに憧れた日々だった、といっても過言ではない。


■ナツヤスミ語辞典 ~詩人~

演劇部の基礎練習として、部員が円状に連なって座り、適当に個々の役を決めて、課題脚本の読み合わせをする、ということを日常的に行っていた。その練習に使われていた脚本もキャラメルボックスの上演作が中心だった。
息も絶え絶えの長台詞を得ると、部員は嬉々となって演じていた。
練習に使われていたキャラメルボックスの上演作のひとつに「ナツヤスミ語辞典」があり、私はこれが大好きだった。単純に夏が好きだったし、この脚本には、素敵な夏がいっぱい詰まっていた。長さが長さなので、実際に演じたことはなかったが、基礎練習では数え切れないほどこの脚本にお世話になった。

先日、図書館でシナリオコーナーをあさっていたところ
「ナツヤスミ語辞典 21世紀版」を発見した。
懐かしさのあまり、手にとってぱらぱらとめくってみる。演劇のことばで満ちていた部室の空気が一気によみがえる。21世紀版、初版からかなり改編されたものらしい。
さっそく借りて読んでみたところ、その面白さに脱帽した。こんなに複雑なストーリーだっただろうか??まったく忘れてしまっている。何より、会話が淀みない。リズムがある。演じている方も楽しめるように創ってあるのだ。
読んでいるだけでは、物足りなくなり、思わず台詞を発してしまう。すると止まらなくなり、部屋で一人、何ページにもわたり、台詞を読み続けたのだった。

1991年、「ナツヤスミ語辞典」初版のあとがきで作者の成井豊さんは以下のように語った。

僕は詩人になりたいのです。詩のかけない人間が詩人になるにはどうしたらいいか。僕は僕なりに考えてみました。(中略)
詩を書こうとしなくても、詩の心さえあれば、その人の書いたものは詩なのです。(中略)
とすれば、僕も詩を書こうとしないで、戯曲を書くことで詩に到達することはできないか。お客さんに見て楽しんでもらうという、およそ詩とはかけ離れたところから、詩を目指すことはできないのか。

このまっすぐなことばが私には衝撃だった。
多くの詩に対して抱いていた物足りなさ、
それはただ詩という形式にのっかって書かれているということへの不満だったのかもしれない。
詩は単純に“書く形式のひとつ”ではないのだ、詩は心なのだ。あるいは身体なのだ。詩は人間そのものから生まれてくるに違いない。

そして、12年後。
2003年、21世紀版のあとがきで成井さんは

脚本を書くことで、詩に一歩でも近付きたい。この思いはいまだに変わりません。おそらく死ぬまで挑戦し続けることと思います。

「ナツヤスミ語辞典」
読後、まさに一編の詩の世界にどっぷりと浸れたような
あたたかい気持ちになれる脚本である。

私は、成井さんの挑戦を応援したい。
成井さんの脚本を上演し続けるキャラメルボックスの活躍にも注目している。
# by moonpower0723 | 2008-05-09 23:20 | ことば
毎日新聞 5月7日夕刊/感謝_d0101676_2265348.jpg


今日の毎日新聞の夕刊《芸術・文化》に載ったのでしょうか。
私もよくわからないのですが。
ネットに出ていたので、おそらくそうだと思います。

《現代詩手帖賞》
記事全文


***

連休明けの今日、久しぶりの登校でした。
「新聞見たよ」「びっくりした!」「おめでとう」って
友達、先生。
いままでほとんど会話を交わしていなかった人にまで言われて。
しかもそれが親しげだったもので
ただただ驚くばかり。
過去に私を惑わせた
元中の不可思議な反応を思い起こしながらも
その場では笑顔で切り抜けました。
素直に嬉しいのと
冷静に受け止めたいという気持ちが
ぶつかりました。
自己嫌悪にもなるけれど
きっと間違ってはいないのです。
謙虚に受け止めます。

もちろん、ここのブログにいただいたコメントも
励みになっています。
休み中にメールをくれた友達や、後輩、小学校の先生にも感謝です。
いつも応援してくださっている方々に
祝ってもらえる幸せをかみしめています。

素晴らしい記事を書いてくださった石田さん、
素敵な写真を撮ってくださったカメラマンの方、ありがとうございました。

「現代詩手帖」6月号に載せる作品が仕上がりました。
なので、頭の芯がぼうっとしているのです。
実際のところ、自分の作品に自信なんてまるでないのです。
逆にどんどん薄れていくようです。
なぜこんな不確かなものを書き続けていられるのか、
きっと周りの方々のお声があるからでしょう。




読んでくださり、ありがとうございます。一読一回クリックしていただければ幸いです。

  にほんブログ村 ポエムブログへ
ランキングはこちらをクリック!

あなたの拍手でもっともっと頑張ります!
一言メッセージ欄、いつも楽しく拝見しています。
「もっと送る」をクリックすると画像が変わることがあります。

押してくださいにゃ♪

私と作品に関するアンケート実施中です。
簡単に答えられますので、多くの方にご意見いただければ嬉しいです。

# by moonpower0723 | 2008-05-07 22:29 | 詩の仕事

今日の北海道新聞

今日の北海道新聞_d0101676_8465534.jpg


今日の北海道新聞。
2ページ目の“ひと 2008”。
笑ってる写真もカラーで載りました。
本名や学校名が載っているので、
冒頭だけ写メりました。

オープンな記事で、びっくりしましたが
交流の途絶えていた方々からも
メールがたくさん届いて嬉しくなりますね。



読んでくださり、ありがとうございます。一読一回クリックしていただければ幸いです。

  にほんブログ村 ポエムブログへ

あなたの拍手でもっともっと頑張ります!
一言メッセージ欄、いつも楽しく拝見しています。
「もっと送る」をクリックすると画像が変わることがあります。

押してくださいにゃ♪

私と作品に関するアンケート実施中です。
簡単に答えられますので、多くの方にご意見いただければ嬉しいです。

# by moonpower0723 | 2008-05-05 08:46 | 詩の仕事

プロフィール

プロフィール_d0101676_11360908.jpg
※こちらは以前公開していた古いプロフィールです。最新情報が知りたい方はこちらの記事をご参照ください。

文 月  光 

ふ づ き ・  み
詩人。1991年北海道札幌市生まれ。
2008年、第46回現代詩手帖賞受賞。高校3年生の時に出した、第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)で中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少受賞。2013年、第2詩集『屋根よりも深々と』(思潮社)刊行。講談社主催・ミスiD2014にて個人賞(柚木麻子賞)を受賞。雑誌に詩、エッセイ、書評などを執筆するほか、第80回NHK全国学校音楽コンクール高等学校の部課題曲「ここにいる」の作詞、タイツブランドtokoneで詩のタイツを手がける。

毎週(月)の朝6時40分頃よりJ-WAVEで詩を朗読中。
NHK・Eテレ『青山ワンセグ開発』6月期の企画〈平成サウダージ〉 に出演予定(6/5,12,19,7/3放送)。
文芸誌を中心に詩、書評、エッセイなどの執筆。
朗読、ワークショップ、講演などのイベント企画。
ファッション、ダンス、絵画、音楽とのコラボレーション。作詞、コピーライティング。

【年譜】
1991年 7月23日北海道札幌市生まれ。
2006年 詩誌「現代詩手帖」「詩学」へ詩を投稿を開始(~2008年)。
2007年 2月 第3回詩学最優秀新人賞受賞。
2008年 4月 第46回現代詩手帖賞受賞。
2009年 10月 第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)上梓。
2010年 2月 第15回中原中也賞を受賞。
2010年 4月 第19回丸山豊記念現代詩賞を受賞。
2013年 8月 第2詩集『屋根よりも深々と』(思潮社)上梓。

適切な世界の適切ならざる私

文月 悠光 / 思潮社


屋根よりも深々と

文月 悠光 /思潮社



「詩は紙の上に在るのではなく、日常の中で心に芽生えるもの、
目撃してしまう一つの現象だと思う。
詩が好きだからこそ、変わっていくことを恐れずにいたい」(あとがき)。

【最近】

ナナロク社のホームページにて、恋の詩を連載中(2012年~)

●東京新聞(中日新聞)詩の月評を担当(2014年~)
●J-WAVE(東京 81.3MHz)「TOKYO MORNING RADIO」にて、
 毎週(月)朝6:50頃、書き下ろしの詩の朗読を担当(2013年~)
●NHK・Eテレ『青山ワンセグ開発』6月期の企画〈平成サウダージ〉 に出演予定(6/5,12,19,7/3放送)。
●詩のタイツ(タイツブランドtokone
 ⇒原稿用詩タイツ詩と女ribon
●第80回(2013年度)NHK全国学校音楽コンクール高等学校の部
 課題曲「ここにいる」作詞を担当。

●詩と何か(絵画、寿司、怪談など)を掛け合わせる「詩×(しかける)」に企画協力。

【関連ページ】
最近の活動(掲載・出演の告知など更新中)
作品ブログ「こゆび」(過去作品。気まぐれ更新)
twitter(告知・雑記)
まとめのページ(このブログに関して)
メール(お仕事・取材のご依頼)



信者並みに私を詳しく知りたい方、幼少からの文月の歩みはこちらです

HOMEに行く・戻る。


# by moonpower0723 | 2008-05-02 21:49 | プロフィール
「現代詩手帖」5月号 新人賞発表_d0101676_23305629.jpg


現代詩手帖 2008年 05月号 [雑誌]
/ 思潮社
ISBN : B0017YLGJM





絶え間ないうずのなかを
下っていく光を
覗き見た。
私は、
上らなくてはならない。


現代詩手帖賞の受賞特集で、作品、写真、略歴、受賞のことばが載っております。
大きな書店さんで、扱っていると思いますので、
興味をお持ちの方はぜひご覧になってください。


■作品「産声を生む」について

家で、ワンピースの下にジーパンをはくと
だいたいやってしまうのですが、ワンピースの裾を持ち上げて
わざとらしく息を切らして見せながら、
「フー、重たいなぁ」
家族は大抵ノってきてくれて
「やだー!できちゃったの?」
通称“マタニティドレスごっこ”
やりませんか?やりますよね絶対(ぇ

私は幼い頃、枕を“マクラちゃん”(センスゼロ)と呼ぶほど
枕が大好きだったのですが
ときどき、服とお腹の間に枕を押し込んで
大またで歩いたりしてました。
すると必ず母あたりが「○○ちゃん、どうしたの!」
と相手をしてくれるので、面白かったのだと思います。
今のマタニティドレスごっこは、その名残なのかもしれません。

ともかく部屋着をワンピースにしてから、
そんな遊びが私のマイブームになってしまいました。
「産声を生む」はそんな馬鹿な私を
家族も相手にしてくれなくなったの頃に書き始めました。
というと、いかにも滑稽ですが、
鏡の前でひとり何度もワンピースの裾を持ち上げているうちに
将来自分が妊婦になったとき浮かべるであろう表情を模索したり
片手で裾を持ち、もう片方の手でふくらんだ腹を無意識に描きだしていたのです。
はっと我に返ったとき、私はこれを詩に書こうと思い立ちました。

今までの中で一番推敲をくり返した作品でした。
けれども選者の方々も指摘されていたように、やはりまだ整理しきれていないと思います。
私の中に甘さがあります、ことばに無駄な情をかけるのです。
本当にことばへかけてやるべき愛は
自分が「生んだ」ことばと、その場の流れが「書かせた」ことばを見極め、
後者を切り捨てることをいとわない気持ちなのでしょう。
書くことへ熱くなると、どうしても作品が長くなってしまいがちですが
それは全く作品のためになっていませんでした。
自分には難しいテーマだったから書きたいことが多かったから時間がなかったから惜しかったから周りが見えなくなっていたから
お前言い訳するなよ、と。
ことばは、正直に訴えるので
「書き手は甘えている」と読んだ人は手に取るようにわかるのです。

■対談合評

3時間半を超える論議だったようです。
投稿者の作品についての発言はもちろんですが
投稿欄のシステムや、選者の方のあり方をめぐる発言も興味深く読みました。
選ぶ側も大変な思いをして、入選・佳作を送り出しているんですね。
藤井さん、蜂飼さん、一年間お世話になりました。お疲れ様でした。
胸に刻んでおくべきおことばがたくさんありました。
特に藤井さんの発言で

まあ、高校生というのはだいたいみんな詩人だからさ、
そのなかで優秀なコンクールでもすれば百人くらい文月さんなみのひとはいるよね

私自身は現時点で少なくとも三百人以上はいると思います。
世の中には器用な子たちがたくさんいて、
模範的な作文がすらすら書けるような子は、“上手な”詩なんていくらでも書けるのです。
まぁ、そこには問題点があって
模範的な作文を書ける子は、そもそも詩を書かなくても世の中を渡っていけるという点です。
もちろん、真剣に書き手を目指している16歳の子たちもたくさんいます。
けれども、彼ら彼女らの存在を末恐ろしい、などとおびえている場合ではありません。
気迫で負けない、というだけではなく、実力でも劣るわけにはいかないのです。

また蜂飼さんは作品について

……
つまり推敲ということで、たとえば今月の作品を
一ヶ月なり二ヶ月先に読み返したときに
作者なりに直される部分がかなり出てくる可能性を含んでいる。

これはさっき書いたこととつながってきます。
受賞したといっても、未熟さが許されたわけではないのです。
“未熟”、便利なことばですが、これを使っていると
本当に自分が未熟なのか未熟ではないのかわからなくなりますし、
しらないうちにそのことばに甘えているような気がしてきます。
自分のこころの中にだけとどめておきましょう。
他の方が教えてくださったことも冷静に受け止め、
気づいたところから直していけばよいのです。

余談ですが、藤井さん節が炸裂していました。
読みながら、四股を踏みそうになりました。藤井さん、相撲が好きなんでしょうか。
選者であるご自分の立場について

裁判官なんだか弁護人なんだか検事なんだか、
何ですかね選者ってのは。兼ねてんだな。
先輩でもあるし、なんだろうなあ。
支援団体、NGOだね(笑)。

なるほど、NGOですか爆。
違う意味で忘れられません。

今後の抱負などは、以前の記事で言い尽くしましたし、
「月暈」のインタビュー企画や、
もうすぐ北海道新聞と毎日新聞
(ごめんなさい、まだこれからです。
どちらとも5月号発売に合わせて記事が出るようです)
にも小さく載ると思いますので控えます。

対談などをお読みになるだけでも面白いと思いますので、
5月号ぜひぜひ。



読んでくださり、ありがとうございます。一読一回クリックしていただければ幸いです。

  にほんブログ村 ポエムブログへ

あなたの拍手でもっともっと頑張ります!
一言メッセージ欄、いつも楽しく拝見しています。
「もっと送る」をクリックすると画像が変わることがあります。

押してくださいにゃ♪

私と作品に関するアンケート実施中です。
簡単に答えられますので、多くの方にご意見いただければ嬉しいです。

# by moonpower0723 | 2008-04-30 23:27 | 詩の仕事

文学少女は詩人をめざす


by moonpower0723