トークセッション「吉増剛造の現在」

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今日から、8月31日(日)まで、
北海道立文学館の特別展示室にて、「詩の黄金の庭 吉増剛造展」が開かれる。
詩人、写真家、俳優、映像作家として世界を舞台に創作活動を行う吉増剛造さんの企画展だ。

関連するイベントが展示終了までいくつも催されており、
今日はオープニング・イベントとして、トークセッション「吉増剛造の現在」
北海道立近代美術館の講堂で行われた。
事前に電話をかけて予約、吉増剛造さんが特集された07年「現代詩手帖」2月号を鞄の中に、母の弁当も持参し、いざ……学校の土曜講習に笑。
講習を無事耐え忍び、ダッシュで学校を出る。
イベント開始は14時だったので、美術館の中庭で、ひとり急いで昼食をとり、館内へ。
受付で名前を言うと「どうぞ」とにこやかに会場に入れてもらえる。
え、なんか凄い笑。むふ、楽しみ。
会場の席はすでにかなり埋まっていた。真ん中の列の席には、ご婦人方が多いのだった。
ひとりだけ制服、なんていう問題じゃない。
自分の髪が黒々していることを認識する。明らかに浮いている。
まぁ、そんなもんだ、と開き直り、前から2、3番目の席を陣取った。

出演者を紹介↓

吉増剛造(詩人)×小林康夫(東京大学大学院教授)
×高橋世織(東京工業大学特任教授)×工藤正廣(北海道大学名誉教授)(司会)


トークセッションの始めに、お客さんひとりひとりに配られたお土産は
資料という名の原稿のカラーコピーだ。「詩ノ汐-穴」(元祖「プール平」)の原稿。。
今日のイベントでしかもらえないものらしい。たいせつにしよう。

トークセッションの始めから終わりまで、
私はとにかくメモをとったり、吉増さんをスケッチしたり(こら)忙しかった。
出演者の細かいやりとりについては、後日他のイベントの感想ともまとめて書くことにする。
とにかく嬉しかったのは「プール平」を視聴できたこと。
そして、何より感激したのは吉増さんを間近で拝見できたこと笑。
なのでそれらに関して、感じたことを素直に書いていきたい。
このイベントは今日限り。二度と同じ場面には出会えないのだ。そう思うとここに書くことでさえ、惜しもうとする気持ちがはたらく。イベント自体は終始和やかな雰囲気で行われた。

吉増さんは黒い上着の下に、首元まできっちり絞まった白いシャツを着ていた。
今日は日差しが強く、暑かった。他の出演者の方は、ボタンが開いていた。
高橋さんだったか、まずこう話した。
「『吉増さんはどういう詩人?』ってもし聞かれたら、一言『疾走』って答えるね。
ある疾走感をもっている人だ。
でも速いだけが速度ではなくて、“ゆっくり”や“爬行”だってまさにすごいスピードなんだよね。
吉増さんはポエジーというか、全身が詩なんです。
自分の気持ちを伝える、という詩の書き方をしている人は
絶対に彼についていけません」
当の吉増さんはその間、持参した袋からテープやら書籍やらを丸テーブルへ並べている。
そのようすに他二人は「ちょっと、何ですかこれ」とつっこむ。
どうやら、東京の自宅からわざわざ他の出演者の著作物を持ってきたようなのだ。
そこで吉増さんは究極的な優しさを持つ方であることが発覚した。
持参したデジカメで、小林さんを撮影し始める吉増さん。
ところが、そのことについて問われると、
「赤ん坊の目と、機械の目は似てるんだよね。
(卓上のミネラルウォーターの)ペットボトルの青いフタがカメラから見た方がきれいなんです」
小林さんは笑いながら
「僕を撮ってるんじゃなくて、フタのブルーに引き寄せられてって、
いつのまにかフタを撮ってるんだねぇ。
色を目指して疾走してるね」
なるほど、まさに疾走である。
吉増さんの手にしたデジカメのモニターに映る、小林さん、高橋さんらしきものが
話の間中、気になる。らしきもの、気になる。

イベントの前半に、スクリーンを下ろして、「プール平」が上映された。
「プール平」とは、“GozoCine”(吉増さんによる一連の映像作品のことを示す)の4本目で、2006年10月15日に吉増さんによって撮影された7分29秒の映像作品だ。
作品の流れは「現代詩手帖」の特集で読んでいたので、知っていたのだが、
やはり誌面で映像(を切り取った写真)と吉増さんの声(をテキスト化したもの)へ別々に目をこらすのと、実物を視聴するのは全く違っていた。
これほど肉体が、私自身が、うち震えた7分29秒はこれまであっただろうか。怖い。書くのが怖い。表現できない。でも諦めない。
ピンチハンガー(いくつもの洗濯ばさみが垂れ下がっているハンガー)に貝殻や小石をくくりつけたものを持ち、水の干上がったプールの底を歩く。積もった雪の間からプールの青い底が見えて、鮮やかだ、鮮やか過ぎる。キセキという装置により、映像は残像を引きずる。プール平という文字が揺れている。息継ぎを探す。ハンガーの貝殻が互いにぶつかって、音を立てる。カラコロと骨が笑うように。そうして、かつて水があったその空間に水が生まれる。
映像が終わったとき、圧倒されてちょっと呼吸がおぼつかなかった。周囲の拍手がゆっくりと私の鼓膜を刺激していた。
自分の胸中にある思いの経験にすり替えて「面白かった」「素晴らしかった」なんて簡単には口にできなかった。「いい」のか「悪い」のかさえもわからなかった。

「プール平」をはじめ、吉増さんの映像作品は、リハーサルなし、無編集の一発本番式らしい。
だからこそ、あんな勢いのある作品が生まれるのだろう。
高橋さんによる
「かつて水があったのだけれど、なくなったという空間を歩き回る、
あれほど“足”を感じる映画もない!」
そう、吉増さんの声と、視線がそのまま映像に反映されているにもかかわらず、
見ている私たちは撮影者の存在は感じなかった。いうならば、目が歩いている感じだった。
奇怪な万華鏡をのぞきこんだまま、ひとりあるきしている、何かの目だ。

そのあともトークは続いた。感覚でとらえていくしかなかった。
たぶん3日後、1ヶ月後、半年後、1年後、10年後あたり、
ぼろぼろと古い層がはがれていくようにわかってくることなんだと思う。
帰りに美術予備校へむかう。私としてはハードな感じ。
デッサン、今日であった“かたち”を頭の中へ刻みこむ、定着してほしい。
しなくてもいい。
プールの青、水の青、そして、吉増さんが引き寄せられたペットボトルのキャップの青、私の目に焼きついている。
万華鏡のように傾けたら、砕けて、結んだ手を離した。青、自在の青
満ち引きする。


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北海道立文学館
「詩の黄金の庭 吉増剛造展」
2008年6月28日(土)~8月31日(日)
休館日 月曜日(7/21を除く)、7月22日(火)
開館時間 午前9時30分~午後5時(入場は午後4時30分まで)
会 場 当館特別展示室
観覧料 一般600(480)円、高大生350(280)円、小中生250(200)円
( )内は10名以上の団体料金。

【関連イベント】 同館HPの案内欄から。 
 各イベント開催2週間前から電話で受付。事前申込みを(同館 TEL 011-511-7655) 
◆ トークセッション 吉増剛造の現在
6月28日(土)14:00~ 道立近代美術館講堂
 吉増剛造(詩人)
 小林康夫(東京大学大学院教授)
 高橋世織(東京工業大学特任教授)
 工藤正廣(北海道大学名誉教授)
◆ 鼎談1 言葉のざわめき、おとのねにおりてゆくとき
6月29日(日)14:00~ 当館講堂
 吉増剛造(詩人)
 柳瀬尚紀(英文学者)
 工藤正廣(北海道大学名誉教授)
◆ 鼎談2 エクリチュール、
書くことうつすことの現在 これからはたった獨りで歌うように映画をつくること

6月30日(月)18:30~ 当館講堂
 吉増剛造(詩人)
 工藤正廣(北海道大学名誉教授)
 高橋世織(東京工業大学特任教授)
◆ キセキgozoCine; vol.1 裏声=吉増剛造×工藤正廣
7月 1日(火)18:30~ 当館講堂
 吉増剛造(詩人)
 工藤正廣(北海道大学名誉教授)
◆ キセキgozoCine; vol.2 裏声=吉増剛造×野坂幸弘(北海学園大学教授)
7月 2日(水)18:30~ 北海道大学遠友学舎
 吉増剛造(詩人)
 野坂幸弘(北海学園大学教授)
◆ 吉増剛造主演 フィルム上映会 「島ノ唄」「彼岸から」
7月20日(日)14:00~ 当館講堂
◆ キセキgozoCine; vol.3 裏声=吉増剛造×工藤正廣
8月8日(金)18:30~ 当館講堂
 吉増剛造(詩人)
 工藤正廣(北海道大学名誉教授)
◆ ライブ・パフォーマンス Na entrada da casa das fogos (花火の家の入り口で)
8月9日(土)18:30~ 当館ロビー
 マリリア(ボーカリスト) 
 吉増剛造(詩人)
◆ ライブ・パフォーマンス Na entrada da casa das fogos (花火の家の入り口で)
8月10日(日)18:30~ 井上靖記念館(旭川)
 マリリア(ボーカリスト)
 吉増剛造(詩人)
◆ キセキgozoCine; vol.4 裏声=喜多香織
8月16日(土)14:00~ 当館講堂
 喜多香織(当館学芸員)
◆ キセキgozoCine; vol.5 裏声=工藤正廣×平原一良
8月17日(日)14:00~ 当館講堂
 工藤正廣(北海道大学名誉教授)
 平原一良(当館副館長)
◆ gozoCine;新作上映会(予定)
8月30日(土)18:30~ 当館講堂
 吉増剛造(詩人)

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by moonpower0723 | 2008-06-28 23:53 | 詩の仕事

文学少女は詩人をめざす


by moonpower0723