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夜には夜の汚れがある。

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私が案内されたのは洋館型の寄宿舎で、好きな部屋で眠れとひとり残された後目についた焦げ茶色の両扉を押し開けると、磨き抜かれた大理石の床にクイーンサイズのベッド、緞帳のような重々しいカーテン(房飾りがついている)、メリーゴーランドから脱走してきた白馬の像の隣には大きなグランドピアノが据え置かれていた。ピアノの蓋は開かれており、異様に細かな鍵盤が誰かの手のひらを待ちわびていたから、私は「吸い寄せられるように」近づき、丁度ピアノを扱った詩を書いていることを思い出して(※)、右手の親指をドの位置に据え、目一杯に指の間を開けば次の音階のミに小指は届くので安心して鍵盤をやさしく押す。一室に和音がこだますと、ふと今が真夜中であることの配慮や、こんな立派な部屋は何かの間違いではないかという思念に取りつかれ、ひとまずピアノを離れてカーテンをめくってみると、さらに広い空間があり、どうやらひとつ部屋を二つに仕切っているらしいのだったが、そこにはパイプイスがまばらに置かれ、五、六台ほどのピアノがイスのように鍵盤の出っ張りで重ねあわされていたから、きっとここは音楽室に違いない、いよいよここで眠るわけにはいかなくなった、と不安にかられていると、背後で扉が開いた気がして振り向けば、掃除婦らしきおばさんが立っていて「この部屋は気に入ったかい?」と問うので頷く。おばさんはどこか誇らしげに右手にモップを握っていた。こんな時間に床を磨くのだろうか。夜には夜の汚れがある。

※この夢を見ていたときに書いていた詩
「あたしは天啓を浴びたのだ」(7月31日、読売新聞夕刊掲載)
この記事は雑記にあたるもので、上記の詩と特に関連はありません




7月27日のあさに見た夢。
ピアノが手元に無いのに、ピアノを詩に描くことに不安を覚えていたら
ピアノの方から出てきてくれてらっきー!だったおはなし。
何はともあれ、ヤマハさんありがとう。終わり。
by moonpower0723 | 2010-08-05 20:13 | 詩の仕事

文学少女は詩人をめざす


by moonpower0723